南の国の太陽、空の色の獅子

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トレックがレオパード・トレックにバイクを供給するまで(cyclowired)
この記事を読むと、トレックが「本気で」マイヨ・ジョーヌを獲りにかかった感を受ける。
トレックは、ランスの7連覇時代、常にランスから厳しい要求を突きつけられ、必死で開発をした。と、ランスが自伝で述べていた。
マイヨ・ジョーヌを獲るために、あらゆる手だてを尽くすのが、ランス流だ。

トレックは、「ランスからアンディ・シュレクに乗り換えた」わけで、今や、アンディは、トレックの大きな期待を背負っている。
トレックだけでなく、ルクセンブルクいや自転車界全体の期待が、アンディにかかっている。ブックメーカーの2011年ツールのオッズは、コンタドールはいない前提で、軒並み、アンディが2位以下をぶっちぎって、ガチガチの本命である。

期待イコール「プレッシャー」であり、応援サイドは「普通であれば」なにがしかの不安の類を抱くものだが、この御仁については、心配は浮かんで来ない。

この人のメンタリティは早くから知られていて、表現は色々ある。
肝っ玉が据わっている。少々のことには動じない。
うろたえない、焦らない、平然、泰然、悠然。
緊張するのが当たり前の局面で、緊張しているように見えたことがない。

同年代のクリスアンケルやフグルサングやモンフォールは、アンディを傍で見ていて、その肝の据わりっぷりに感銘を受けたことを公言する。
彼等から見て、アンディのメンタリティは特筆すべきものであり、「リーダーとしての優れた資質」である。
リーダーが、自信を失っていたり、パニックを起こしては、ヘルパー(アシスト)は彼を信頼して全力で働くことができない。
アンディは、「彼を勝たせるために働こう」と思わせるに十分な「信頼」を、チームメートたちから得ている。

アンディは、チームの中で最も年少だが、チームメートたちから尊敬を受けている。クリスアンケルは、09年ツールに初参加したときにそう感じた旨を記した。

昨年のツールでも、アンディは、失意や狼狽した様子をチームメートたちに見せなかった、と伝わっている。
第15ステージも、直後は怒っていたが、すぐケロッとなった。悪いことがあったときでも、くよくよウダウダ引き摺ることをしない。本人も、自分はそうなんだ、とメディアに対して語るのが常だ。

けれども、シーズンが終わり、リースとの関係が切れた後、シーズン中は口から出さなかった幾つかのことを、喋った。
フランクを失ったとき自分がどれだけダメージを負ったか、そしてそれを周囲の人に悟らせなかったか、即ち「隠し通した」か。

また、コンタドールとの仲よしぶりは、「意図的に装っていたこと」だと、そういう意味の発言が、つい先日(1/26)レキップが掲載したインタビュー記事の中にあるらしい。

ネット上にあるのは、レキップ本紙の記事の一部で、全体を読むことができないので、発言の本旨を取り違える危険はある。記者が、彼からこういう言葉を引き出したいと欲して、うまく質問を投げ、首尾よく引き出せて、「記者の書きたいと思ったことを書く」ことは多いからだ。

そのため今回の発言が、記者の誘導による可能性も否定できないが、今の彼が、もしも「コンタドールを友人の範疇に入れている」としたら、その方が不可解である。
彼の周りには、デンマーク語を解し、リースの自伝を読める人間が多数いる。「コンタドールがなぜ彼に謝罪したのか」を、彼はとうに知っているだろう。

レキップの元記事
http://www.lequipe.fr/Cyclisme/breves2011/20110126_095037_schleck-a-souffert.html
引用
http://www.velonation.com/News/ID/7217/Andy-Schleck-suffered-after-losing-last-years-Tour-de-France.aspx
http://www.cyclingnews.com/news/schleck-gutted-and-disappointed-after-losing-tour-de-france
http://www.marca.com/2011/01/26/ciclismo/1296041253.html

引用箇所は、サイトによって多少違う。スペイン紙(marca・as)は、コンタドールと仲違いをしなかったのは、世間の騒動(か「ブーイング」か、スペイン語の意味の理解できず。どちらであっても、おおざっぱな意味は理解できるかと)が不快だったので、鎮静化させたかったからだ、という箇所を紹介している。
正しいことだったかどうかは判らないけれど、当時の自分はそうするのがいいと思ったのだ、と。

彼の心の内の本当のところは判らぬけれど、こういうふうに思う。
彼は、仏様でも聖人君子でもないので、腹を立てるときもあれば気に入らないものもある。望みが叶わなければ落胆する。困難なとき、うまくいかないときに、「平気の平左なわけではない」。
ただ、感情の赴くままに振舞うことをしない。自分をコントロールすることができる。だから、外からは、いつも悠然とリラックスして見えるだけ。

「思っていることをそのまま表では言わなかった件」は、昨年ツール以外にもある。
2008年ツール。あのときフランクが深く傷ついたことを、サクソバンクに在籍する間は、本人もアンディも隠し続けた。サクソバンクでもうレースをしない立場になった昨秋になって、ようやく、率直に、口から出した。
昨年のブエルタの事件も同様だ。彼等2人は、「リースのチームの選手であった間」は、リースとトラブルを起こすことを極力避けるよう振舞っていた。

今年7月、コンタドールのいないツールで大本命とみなされ、これまで経験したことのない注目を浴びる立場になっても、彼は多分、大丈夫だろう。
掛かるプレッシャーは、年ごとに段々と増してきた。一足飛びではなく一段一段階段を上ってきた。4回目の今年、主役になる準備はできていると思う。

チーム環境は、今までと同じだ。レースの現場は、昨年と異なり、信頼するアンデルセンが指揮する。チームのマネージメントサイドもチームメートも、周りの誰も、彼に不要なプレッシャーをかけることはない。
リーダーはアンディ1人でなくSchlecks(フランクと2人)というポーズは、アンディにかかるプレッシャーを軽減する効果をもたらす。勿論、実際に勝つのはアンディだとみな知っている。でも「アンディに万が一のことがあってもフランクがいる」。

昨年、アンディは、「フランクなしでも」闘えることを証明した。だが、実際には、彼は、毎日3回フランクに電話していた。コース上にはいなくとも、アンディにとってフランクは「常に」存在していた、と解釈するのが正しいのではないか。
この先、このシャム双生児の如き関係がアンディのキャリアにどのような結果をもたらすのかは、今も判らない。けれども、自分はもはや、心患わない。

そして、「なんとも、面白い相手に目をつけたもんだ」と自分の選択に興じている。
08年ツールで目を止めたとき、こういう展開は全く想像しなかった。
「自分はこれまでいつも、チャンピオンになる子を見染めていたのに、この子は違うんじゃないか。勝利に対する執念がない。これじゃあ永遠にコンタドールに勝てなくて2位で終わりそう。どうして、この子を選んだんだろう?ん~、おかしいなあ」・・どうやら、おかしくはなかった、らしい。

<関連>
2010/07/03 シャム双生児の如き
2010/11/10 コンタドールの謝罪は、リースの指示の産物。


●忘れ物常習犯の件

「ツール・ド・ランス」(2)~シューズを忘れるエースで、アンディの忘れもの常習犯の話題を書いた後日、何気なしにTVを見ていて、「はた」と気づいたことがあった。

見ていた番組は、「NHK福祉ネットワーク~大人の発達障害」。
ADHDの症状として挙げられた3項目の一番下に、「整理ができない」。

発達障害とかアスペルガー症候群といった名称は最近かなり広まっているが、自分はこれまで、ちゃんとした知識をもっていなかった。こういう知識は、身近に例がいて、勉強する必要に迫られないと、得ずにすませてしまう。自分は、うつ病の本は読んだが、こちらは機会がなかった。

「アンディは、子供の頃、集中が全くできなくて、お母さんがしゅっちゅう学校に呼び出されていた」という話を、シュレク家は、メディアに対して公言している。
2009/10/26 自由奔放な末っ子

調べてみると、注意欠陥多動性障害(ADHD)の症状そのまんま、である。
現在の、「いつも忘れ物をする」「整理ができない」も、ADHDの症状そのまんま。

そうと知ると、「そうか。世の中にはこういう人がいるのか。とりたてて珍しい話ではないのね」。
ADHDの知識を持っている人であれば、アンディの忘れもの常習犯の話を読んだら、それはADHDだ、とすぐ思いつくに違いない。
集中できない問題のある子供だった、となれば、疑う余地なく、「大人になっても残っているのね」。

彼の場合、自転車RRの選手として天才級の才能を持ち、家族を始め周りの人々が彼を理解し、サポートしていて、問題なく社会生活を送れている。どころか社会的に成功している。
ADHDの症状は色々あるが、彼は、「忘れ物」の症状は続いていても、不利益になる症状が他にはないのだろう。
だから、クリスアンケルも、奇妙なパラドックス、という記述をした。レースをやっている最中は、冷静に物事を考え、事態に対処し、混乱することは全くない。管理ができる。それなのに、持ち物に関しては、全く管理ができない、と。

日常生活に大きな支障がないことは、実家を出て1人暮らしを始めたことで判る。
引っ越しは、1年前から計画していた(CNのブログに書いていた)。その後どうしたのだろうと思っていたら、先日情報を知った。

でも、お母さんに日常の身の回りの世話をしてもらわなくなって、1人で本当に大丈夫なのかねとちょっと思ったら、フグルサングが、同じアパートの下の階に引っ越してきたんだそうだ。(追記参照)
http://www.feltet.dk/nyheder/fuglsang_flytter_hjem_til_andy_schleck/
今までも、ガルダ湖畔(イタリア)とルクスの2箇所を行ったり来たりしていたが、本当にルクスに越してきた。
昨年ツール前にアンディが、引っ越してきてほしい、と堂々と喋っていたので、来たことは驚かないが、同じアパートに住むとまでは思わなかった。
アンディの癖をじゅうじゅう判っていて来てくれるのだから、「フォロー宜しくね!」といったところか。

(補足。昨年までルクスに住んで、アンデルセンやシュレク兄弟と一緒にトレーニングをやっていたクリスアンケルは、イタリアへ引っ越した。昨年アンディの山岳アシストを務めた2人の居住地が入れ替わったという話)


・追記(1/30)

アンディの身の回りの世話をする人が、お母さん以外にいるかもしれぬが、現時点で対外的に公表されていないので、スルー。

・追記(2/2)

間違いの訂正。
Jakob Fuglsang set to move into the apartment below Andy Schleck in Luxembourg (velonation 2/2)
velonationのfeltet.dkの紹介記事によると、フグルサングの引っ越しは「予定」で、まだ引っ越してきてはいないとのこと。
デンマーク語の「時制」の理解を間違えた模様。
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コメント

こんばんは
いつも記事を拝見させていただいていますが、ネット環境に明るくない自分にとって、今回の記事は本当に救われる思いです。アンディのメンタリティの件はかなり不安な気持ちになっていましたので。
スポンサーの件やコンディション(まだ体がしぼれていない感じ)など不安は残りますが、プレッシャーに負けずこれまでのようにのびのびと、そして更に勝負強さを兼ね備えた彼の走りをこれからも見たいです。こんなことを思ってしまうのもプレッシャーになりそうですが…。期待ばかりしてしまうのは酷なことでしょうか。
なんだかネガティブなコメントで申し訳ないです。でも今夜はRIHO様の記事にとても救われました。ありがとうございます。
2011/01/28 04:14URL  bell #-[ 編集]

こんにちは!
「アンディのメンタリティ」改めて、すごく面白いな~と思いました。 彼のファンになってまだ日が浅いですが、数々のニュースや他の方々のコメントを読んでもどうも捉えどころが無かった私の中の「アンディ像」が、このRIHOさんの記事で、漸く落ち着いたような気がします(笑)
過去に関する様々な『今だから言える』と言うアンディの告白(?)も、最初はビックリしましたが安心もしました。何もかも「全てレース」と割り切っていつも笑ってられるはず無いですよね。後悔や悲しさや憤りも抱えつつずっと努力し続けているんだなぁー、なんて…今更ですが…。
それにしてもフグルサングとは本当に仲良しなんですね!
2011/01/28 23:32URL  yumi #CUfDMpGo[ 編集]

bellさん
ファンというのは、期待と不安といっぺんに両方持つものですよね。
私も、昨年は、随分心配したものです。膝の故障だわ病気だわで調整が遅れて、シーズン序盤のスケジュールの変更を余儀なくされ、げ~っ、となってました。
レースで結果はまったく出さず、5月のカリフォルニアでもまだダメ。

だけど、当時(カリフォルニア)、本人は、「ツールに間に合えばいいんだよ」とこともなげに言ったそうです。
そして、その弁の通り、ツール本番ではコンディションばっちり。

と、不安軽減の話を書きましたが、人から聞いた話じゃ無理だと思うんですよ、自分で経験しないと。
私は、経験したから、肝が据わってきたわけです。
「相手を信じる」には、根拠がいるし、時間も要ります。
だから、bellさんも、今年は、不安を抱えても当然、といったスタンスでいいんじゃないでしょうか、乗り越えると、翌年からは変わりますよ。

普通こんなこと言うか、ですが、「不安を抱くのはファンの宿命」だと思うのです。
かつて、私の決まり文句は、「ファンは覚悟と忍耐」でした。
「腹括ってファンやれ!」・・「意味がわからん」人が多いでしょうけどね。
2011/01/30 20:38URL  RIHO #-[ 編集]

yumiさん

今回書いたのは「ある一面」だけの話だし、彼の像は、今後、修正していくことになると思うんです。
同じ要素に対して、評価が変わることも起こり得るし、常に修正を続ける、んですよね、人物像というのは。
いろんな面があるわけで、あ、こういう面もあるのか、とか、そういう心積もりを持っておく、と。

シューマッハファンをやっていたとき、彼の人物像の理解が、ファンの間でものすごく違っていて、あるとき、「同じ相手のことを語っているとは思えない」という名科白を、知り合いが呟きました。

この人も、そのけらいがちょっとあるかもしれませんね。
2011/01/30 20:56URL  RIHO #-[ 編集]


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