南の国の太陽、空の色の獅子

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■「ツール・ド・ランス」(ビル・ストリックランド/アメリカン・ブック&シネマ/2010.9)



奇跡は起こらない

本書の著者は、ジャーナリスト(自転車雑誌のエディター)で、一般人ではない。だが、彼の綴る「ランスのファンとしての揺れ動く心」が、私には、手に取るように判る。

復帰してほしくない。コンタドールには勝てない。ランスが弱くなって負ける姿は見たくない。
でも、本人が復帰を決めたのなら、寄り添う。すべてを見届けたい。
ああ、だめだ、と思うときもある。でも、だめだと判っていても、諦めきることはできない。希望を持つ。
ツールの日を重ねるごとに、彼に勝ってほしいという願いは強くなる。
現実は、判っている。客観的事実が見えず、彼を崇拝・礼賛する盲信的なファン、ではないから。

著者は、09年ツールを、いくつかのステージではアスタナのチームカーに同乗し、ブリュイネールやエキモフや馴染みのスタッフたちと会話を交わし、文字通り、ランスに密着して、過ごした。

表向きは、理性的なジャーナリストとしての冷静さを保ちながら、ランスのファンとしての深い思い入れを内に込めた描写でもって、記述は進む。

実質的な最後のレース日、第19ステージの終盤は、モン・ヴァントゥー山頂に登り、ゴール近くのVIP席にあるTVで、レースを見ていたが、表彰台を争う総合上位勢のアタック合戦が始まって少しすると、「とても観ていられなくなり、テレビの前を去った」

「ここモン・ヴァントゥーで私が失ったもの、それは希望だ。もしかすると、何かを得たと言ってもいいのかもしれない。それは教訓だ。今の私は、サイクル・ロードレースには奇跡なんて起こらないと認めている」
(P.337)

そう。奇跡は起こらない。
著者がこの日に知ったことを、私は、98年に、知った。

鈴鹿で仮にスタート失敗も破片を踏むこともなく勝ったとしても、ミカが2位ならばタイトルはミカに渡った。ミヒャエルがタイトルを獲るには、奇跡が起こるしかない。終わったとき、「このひとには、奇跡を起こす力はないのだ」そう思った。

09年モン・ヴァントゥーの山頂での著者の記述を「本当に」理解できる読者は、ごく僅かしかいないだろう。
98年鈴鹿での私の思いに共感をする人がほとんど存在しないのと同じくらいに。

09年ツール後、私のランスに対する興味は、急速に失せていった。
今年の彼の末路にも関心を持たなかったし、ツール後の雑誌も、彼の話題のページは、読まずにとばした。

しかし、この本は、読んで、よかった。
「本」は、僅かな時間で作る雑誌やインターネット上の文章よりも、遥かに深い意味を伝えることのできる媒体だ。
そして、おそらくは、ランスに対する深い思い入れを下に隠した、「あまっちょろくない」描写が、私の波長に合ったのだろう。
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