南の国の太陽、空の色の獅子

Category :  自転車
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戦々恐々していた第3ステージまでが終了した。
ツールを失う可能性があると総合勢の誰もが警戒していた第1週。

アンディは、タイムは失わなかった。初日TTで想定以上に遅れ、第2ステージでは落車して危なそうな場面をみせたが、最難関の第3ステージは、チームの力のおかげでコンタドールを逆転して上に立った。
しかし同時に、大きなものを失った。フランクが落車してリタイアした。

受け取り方は色々ある。
チーム力の観点でいえば、フランクを失ったことは、山岳での戦力が大きく減じたことを意味する。
けれども、別の見方もある。
これは、アンディにとって試練だが、もしかしたらチャンスでもある。突き放した見方だが、「彼は、兄なしでもやれるのではないか?」という疑問に対する答が出る。

彼等兄弟はシャム双生児のようなものだから、一緒にいたいなら、いて下さい、というのが今の自分のスタンスだが、アンディは、兄に囚われている限り、今以上にはなれない、兄から離れた方が選手として成長する可能性がある、という見方も同時に持っている。
今回、心ならずも1人取り残された彼が、ここからどういうレースをするかが、実に興味深い。

今年の山では、彼が何度も後ろを振り返り、兄を待つシーンを、我々が見ることはない。
彼にはもう、自分に追いつくのを待つ相手はいない。自分が勝てたステージを譲る相手もいない。自分自身の戦績のために、前を向いて走るだけ、のはずである。

Fränk Schleck, a key weapon in the mountains and a mentor and confidant to his younger brother.
この表現は確かに当たっている。アンディは、フランクが傍にいると安心してレースができる。だから傍にいてもらいたい。
けれども、昨年示されたように、アンディが、コンタドールに挑むことより、フランクを助けることを選び、フランクを踏み台にして上を目指すことをしないなら、マイヨ・ジョーヌを取れる日はこないだろう。

第3ステージでアンディがコンタドールとランスからタイムを稼ぐことができたのは、フランクのクラッシュのお陰だ。
集団前方で起こったあの事故が原因で、集団は分断した。
第3ステージで得たタイムが、フランクの犠牲の上のものであることを、当人が認識し、残された自分が「フランクのために」頑張ろうという意識を持つならば、この先のステージで彼は弱くはならないだろう。

「兄が傍にいないとダメ」ならそれはそれで構わない。やっぱり、「2人で1人」だったのか、と思うだけだ。
しかし、今回のシチュエイションを、少々の期待を込めて見守っていきたい。
どうせ、フランクがいても、コンタドールにアクシデントが起こらなければ、2位以下に決まっているのである。
だったら、1人で、コンタドールに挑む姿を見られるなら、その方が楽しそうだ。

第3ステージ
・フランクのクラッシュ


録画を見直し、フランクの落車は、不運ではあったが、「最大限の注意を払っていたら、避けられたかも」と思った。

難度の高いセクター4に、サクソバンクは、先頭でトレインを組んで突入した。突入するとき、先頭にいたのはアンディだ。パヴェの直前までオグレディが牽き、アンディは2番目にいた。
突入した直後、カンチェが、横から上がってきた。この4からが、彼の担当だった。
上がってきたカンチェの後ろにアンディはついた。最初は道が広く、3列に横に広がり、サーヴェロ他各チームが入り乱れた状態のまま左カーヴに入った。
カーヴを抜けるとき、カンチェの後ろについていたのはアンディだけで、フランクは2人から少し離れ、彼の前には他のチームの選手が1人いた。
その選手が道の真ん中で落車した。真後ろのフランクは、避けられず、つんのめって、飛ばされた。

サクソバンクの守るべき最重要選手はアンディで、まず彼を守るための策をチームは指示したのだと思う。
アンディは、徹底的に、前の位置を確保した。常にパヴェ班アシスト(ブレシェル・オグレディ・カンチェ)の真後ろについた。
セクター4では、先頭で入り、「カンチェの真後ろ」という最も安全な位置にすぐ入った。そこがアンディの指定席だったのだ。

フランクは、アンディのような「最大限安全な位置」にはいなかった。フランクの指定席はアンディの後ろで、もし、その位置でカーヴを抜けられたら、他チームの選手のクラッシュに巻き込まれずにすんだ。
チームメートたちからほんの少し離れた「魔の時間」だったのだろう。あのカーヴを抜けられたら、アンディの後ろについて、一緒に行かれただろうに。

・サクソバンクのチーム力

昨年、パヴェのコースが発表されて以来、「うちのチームが有利。カンチェラーラ、プレシェル、オグレディがいるから」がアンディの口癖だった。
言っていることは事実だが、過信していると本番で失敗することがある。此方は気が気でなかったが、終わってみると、サクソバンクは、パヴェでの最強チームであったことを遺憾なく示した。

パヴェに入る前をフォイクトが引き倒し、パヴェは、前半の各セクターを、ブレシェル、オグレディ、ブレシェル、の順で担当。難関の後半を、現役パヴェ最速のカンチェが牽く、という完璧な布陣を展開し、(軽量級クライマーでパヴェに不慣れな総合エースの)アンディを、無事ゴールまで運ぶことに成功した。

運んでいきたかったもう1人のシュレクを守ることができず、落車で失ったので、達成した目標は約半分だが、「1人は運べても、2人は無理だった。ツールは甘くない」ということで。

■第2ステージ

第2ステージを見ているとき、落車したシュレク兄弟が集団復帰にひどく手間取っていることを、不審に感じた。
まず、シュレク兄弟は、総合で重要な選手だから、集団は復帰を待つはずだ。それが、ツールの暗黙のルールである。アンディは、このルールが適用されるに十分な選手のはずだ。
第二に、集団の先頭には、マイヨ・ジョーヌを着用するチームメートのカンチェがいる。マイヨ・ジョーヌは、集団で敬意を払われ、尊重される。マイヨ・ジョーヌがペースを落とせば、抜け駆けは基本的に許されない。これも暗黙の紳士協定だ。

2つの条件が重なっている。カンチェにとって、自分のマイヨ・ジョーヌよりシュレク兄弟の復帰の方が優先順位が上だから、兄弟の復帰に問題はないはず、なのに、どうしてこんなに苦労するんだ?

ブレシェルは自分のバイクを差出したが、走り出したアンディの周りに、暫くの間どうしてチームメートが誰もおらず、1人で走っているのだろう?守られるべきエースなのに?

答のひとつは、「あまりの大量落車(一説によると80人)で、情報が混乱して、チームカーも選手たちも、誰がどこにいるかの状況を正確に把握するのに時間がかかった」ためらしい。

http://www.cyclingnews.com/news/leipheimer-describes-ardennes-stage-as-pure-survival

フォイクトの言うには、落車を免れて先頭集団にいたカンチェと自分は、チームカー(リース)からシュレク兄弟を待てと言われて待っていた、ところが、追いついてきた集団にいると思ったら、フグルサングがやってきて、この集団には自分しかいない、と言われ、そのとき、シュレク兄弟がもっと後ろであることを知って、迎えに行った、のだそうだ。

ブレシェルがアンディに自転車を渡したのはTV画面に映ったが、実はフランクも、自転車を失い、クリスアンケルが、フランクに自分の自転車を渡していた。
クリスアンケルとブレシェルは、スペアバイクを受け取るべくチームカーを待ったが、1台目は、シュレク兄弟のために先を急いだので、2台目を待たねばならなかった。ようやく自転車を受け取ってゴールに向かった結果、19分遅れになった、とのこと。(クリスアンケルのブログ

兄弟の復帰のために、ニキが牽いて千切れ(13分遅れ)、フォイクトが牽いて千切れた(8分遅れ)。

アシストをできる立場にいたがしなかったのがフグルサングで、彼は、ブレシェルと一緒に、自分たちの前でシュレク兄弟が2人とも地面に倒れたのを見たが、ほって、先へ行ってしまったらしい。
どうも彼は、目下、チームの中で1人だけ、「自分の総合順位」を優先することを許されているような感じだ。
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