南の国の太陽、空の色の獅子

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出版は06年。トヨタやホンダの本はいうに及ばず川端康成の小説を読む暇があったら、これを先に読むべきだった。
Amazonのレビューを見れば、案の定絶賛の声だらけである。

序盤、「ナイフのように切れ味のいい文章」に感心した。いや、外科医だから、ナイフでなくメスか。
読み進んでいくと、文章以上に、記述の中身の切れ味の鋭さが、半端でない。
最後には、医療従事者以外の日本国民全体をぶった切る。
辛辣な言葉は、直接的には「ジャーナリスト」に向けているが、それは「ジャーナリストが社会思想に対し影響力が大きい」からであり、著者の批判の対象は、「患者」即ち医療従事者を除いた全員である。

以上は自分の抱いた感想で、同じ本を読んでも、何も感じない人もいるのが哀しき現実であろう。
いや読むならまだましで、読んでみようともしない人の方が多いのだ。・・自分も今まで読まなかったのだから。

「医療とは本来どういうものかについて、患者と医師の間に大きな認識のずれがある」

「医療の不確実性は人間の生命の複雑性、有限性、各個人の多様性、医学の限界に由来する。
医療行為は生体に対する侵襲を伴い、基本的に危険である。
これを患者に正確に判ってもらえるようにするのは至難の業である」

「医療には限界がある。
しかし、多くの患者はこれを実感として理解していない。
すべての人間は必ず死ぬということは分っているが、自分や自分の家族の問題として捉えていない。
生命を守ることを医学の任務とするならば、医学は最終的に、100パーセント任務遂行に失敗する。
しかも、いつ失敗するか正確には予想できない。現代医学には、体内に起こっていることを大まかに想像する程度の能力しかないからである」


ちょうど1年前、私の家族は、著者の指す「患者」そのままだった。
某大学病院の心臓血管外科の担当の医師は、手術の実施前に、文書で、危険性の説明をし、内容を了解するサインを求めた。
難しい手術ではないので、通常の危険性は3%だが、今回は個人の条件上、上昇して5%ある、と述べた。

医師の説明を、家族の1人として後ろで聞いた私は思った。
「手術で死ぬ可能性が5%あります、と宣告されたわけだ。今手術をしないと死ぬ、あるいは急速に病状が悪化する可能性が高いなら、手術は十分理に叶う。でも、そういった差し迫った病状ではないのに、手術をすると、ここで人生おしまい、ということもあるとすると、自分なら、怖気づくな。運が悪けりゃここでおしまいでもいい、という覚悟が要るから」

だが、私以外の家族は、私と同じようには考えなかったらしい。
「大丈夫だろ。最近は患者から訴えられることが多いから、予防線を張ってるんだよ」
返ってきた返事がこれである。

5%の危険性が嫌なら、手術は何も受けられない。手術に限らず、日常生活に支障をきたす。人は、日常の生活において、5%のリスクは思い煩わないのが普通だ。自分は運の悪い5%には入らない、95%に入る、と思って暮す。

そして、もし5%に当たったら、運が悪かったと悲しんで、それですませればいいのである。
うちの家族も、仮に、手術で運悪く5%に入って死んだとしても、医者が悪いと文句は言わなかったことは間違いない。
医療の本質を判っていなくても、大人しく現実を受け入れて、医療側に噛みつくことをしないなら、それで問題はないのだ。

そこからすれば、「おかしくなった」のは、著者の述べるように「日本人の死生観」というより、「自分の利益・可能性・欲望を限りなく追求」し、同時に「他人に対する要求が限りなく大きくなった」日本人の倫理全般ではないだろうか。
死を受容せず、医療側を攻撃するのも、「行きすぎた利己的欲望追求」の一環である、という解釈の方が当たっているのではないか。

著者は、理系と文系両方の脳を持った非常に頭のいい人だ。
法律家と正面切って論争しようというのだから、相当の自信がないとできない。

「医学は、あらゆる学問を取り入れる柔軟性を持つ。生物学、化学、工学、物理学、統計学、経済学、経営学、社会学、文化人類学、哲学、倫理学、心理学、と何でも取り入れる。法律学も、必要とあれば勉強してしまう」
強烈である。
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