南の国の太陽、空の色の獅子

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シュレク兄弟の話が「物語」(連載小説)になるのは、「2人の関係が、時と共に変化」してゆき、その経緯が興味をひくから、である。

この兄弟は、弟が、兄より、ステージレーサーとして優れた才能を授かった。5才の年齢差があるため、最初のうちは、兄の方が力がある。でも、時が経つと共に、弟が強くなり、兄に追いつき、やがて追い越す定めにあった。

08年、2人は初めて揃ってツールに出場した。兄が3回目、弟が初参戦のこの年は、まだ、兄は弟に負けていなかった。
経験不足から、ハンガーノックというミスを犯した弟は、総合争いから脱落し、以後、アシスト役に回った。
けれども、アルプスの登りで、最も強いのは彼ではないか?とさえ思わせる脚をみせたのは弟だった。
弟の強力なアシストに支えられ、マイヨ・ジョーヌを2日間着た兄は、「いつかお前がツールで勝つ。そのときは俺がアシストする」と弟に言った、と伝えられた。
最終の総合順位は、兄6位、弟12位。

2年目。リースは、弟に、エースナンバーを与えた。
ツール直前の国内選手権で、兄は、弟をアシストして、勝たせた。前年、弟のアシストを得て勝った兄は、今年エースとしてツールに出る弟に、ナショナルチャンピオンジャージを着せて走らせてやりたかったのだろう。

但し、おそらく、リースは、昨年と同様の体制でいく、つまり、誰でトップを狙うかは状況次第だ、という方針を伝えていたのだろうと思う。昨年の序盤にリースは、「うちにはカードが3枚ある」という発言をし、サストレと限定しなかった。
だから、兄は、弟を支えて走る心積もりを持ちつつ、自分の総合順位を犠牲にするアシストは、しなかった。「2人ともに順位を上げる」ことを目指したのだ。

全日程が終了したとき、弟が兄を完全に追い越したことが、誰の目にも判った。
弟は、ミスを犯さず、全日を通して安定した強さをみせつけた。第17ステージは、2人で力を合わせ、一緒にゴールまで行かれたが、兄が弟のスピードについていかれたのは、あのステージだけだった。
2人の抱いた「一緒にパリの表彰台に立つ」夢は、モン・ヴァントゥーでの弟の懸命なアシストの甲斐なく、叶わなかった。
最終の総合順位は、兄5位、弟2位。



■この先の物語がどうなるか?

モン・ヴァントゥーで、アンディが、勝利を目指さず、兄を表彰台に引き上げるためのレースをしたことに対して、一部に、批判意見があったらしい。(海外のファンのブログの記載によれば)
ガゼッタの記者も、アンディに向って、「フランクのためのレースをしなかったら、勝てたよね。後悔はない?」という質問をしている。

確かに、あの日、アンディが、フランクのアシストを諦め、ステージ優勝狙いに切り替えていたら、勝てた可能性が高かったと思う。
ガラテたちに追いつく力は十分あったようにみえたし、コンタドールは、ステージ優勝を狙わなかっただろう。
コンタは、総合リーダーの定石通り、総合2位のアンディの後ろにべったりはりついて登った。最後にアンディを抜く力を持っていても、全く引かないで登った以上、総合王者として、ステージはアンディに譲ったのではないか。

「フランクがいなかったら、僕はここにいない」で始まるアンディの返答は、彼が精神的に兄に依存している印象を、読み手の多数に与えたかもしれない。
兄の側は、弟を支配しているつもりはないのだが、弟は影響下にいる。いわゆるマザコンの兄弟ヴァージョンだ。
この解釈は、多分間違っていないが、モン・ヴァントゥーについては、少し「付け足し」をしたい。

チームは必ず、あらかじめ、その日の作戦を立てて、レースに臨む。モン・ヴァントゥーで、アンディがフランクの総合順位引き上げのために働いたのは、リースが指示した作戦であり、アンディが個人の判断で行なったものではなかった、とみなすものと思う。
アンディは、ステージ優勝を捨てたかもしれぬが、総合順位を、兄のために犠牲にしたわけではない。「アンディ総合2位キープ+フランク3位目標」は、「チームの方針として」十分ありなのだ。

だから、まず「チームオーダーありき」で、それが兄弟の個人的願望と一致していたため、あたかもアンディの兄への執着ゆえの自己犠牲に見えた、というのが、あの日の解釈の正解だろうと思う。
もしも、リースが、「ステージを取るんだ!行け!」と指示を出していたら、アンディがそれに従わず、フランクから離れなかったとは考え難い。
(オーダー無視だったら、けっこうな問題になる)


アンディのブラザー・コンプレックスは、彼の選手としての成長の妨げになるだろうか。

現時点では、悪い方向を考えなくてもいいと思う。
上に書いたように、彼は、兄に囚われて自分の戦績を損ねることはしていない。リースはそうさせてはいないし、なにより、フランクが望まない。

世界のトップレベルのスポーツでは、心の支えになる人に傍にいてもらうことが、選手のメンタル面にプラスに働くことが、ジャンルを超えて共通して見られる。
厳しい競争の世界で、1人で戦っていくのは、強い人間でも辛くなるときがある。そういうとき支えになるのは、信頼と愛情で結ばれた家族であるケースが多い。
そのことを思い出せば、兄が同じチームにいて、「一緒に暮して、一緒にレースをして、一緒にトレーニングする」ことは、プラスになりこそすれ、マイナスではあるまい。

今の彼はおそらく、自分が兄を超えて、大きくなっていくのを自覚していく途上だ。
見分けがつかないほどうりふたつといわれた外見は、少し違ってきた。足は、自分の方が大きくなって、兄のシューズは履けなくなった。ファンから兄と間違えられ、兄のサインを覚えて、兄になりすまして兄の名を書いていた頃のままではないことに、少しずつ気づいている。

この先、兄との力の差は開いてゆき、否応なしに、兄を置いて、先に行かねばならなくなる。そのとき、1人で先に行くことが、兄の望みであることを、彼も知っていると思う。
今年のモン・ヴァントゥーでしたように、何度も振り返って兄を待つことは、多分二度とない。
そうなることが、彼と彼の一家にとっての幸せだろうと思う。彼がいつかパリでマイヨ・ジョーヌを着ることが、シュレク家の人々の夢なのだから。
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