南の国の太陽、空の色の獅子

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ミヒャエルの評価・解釈に言及すると、書き足したり、書き直したい気持ちがずるずる出てくる。書く元気があるときは書いておこう。

ミヒャエルの卓越性について語るなら、一番目に、「人を動かす力」を挙げたい。
所謂F1ドライバーとしての能力だけでなく、この力を持っていたことが、F1史上に残る戦績を可能にした、と思う。

・Our Inspiration

「人を動かす力」の意味のひとつは、5/11に書いた、他人に「この人のために働きたい」と思わせる力である。
別の言い方をすれば、「カリスマ性」、「求心力」といった類。

我々日本人は、この件を非常に判りやすく伝えてくれる人を持っていた。ブリヂストンの浜島さんである。浜島さんの使う言葉は日本語で、かつ率直な方でいらしたので、言わんとすることが此方に伝わりやすかった。

BSは、06年の日本GPのブースに、"Michael,Our passion,Our Inspiration! Thank you!"という言葉を掲げた。
あの手向けの言葉を、誰が考えたのか、迷いなく決まったのか、考え抜いたのか、事情は知らない。
だが、あれは、BSにとってミヒャエルがどんな存在であったかのBSの表明であった、と私は解釈している。
"Our passion"は、「我らが情熱」でよかろう。"Inspiration"は、日本語でちょうどいい熟語がない。「霊感」ではない。意味するところは、「鼓舞する人」だ。

BSの餞は、ミヒャエルが、「他の者を鼓舞し、チーム全体にエネルギーを引き起こすパワー」(ロス談)をチームの人間だけでなく、チームの外部の人間に対しても及ぼしていたことを示している。
彼は、タイヤという要素がマシン戦闘力に占める割合が極めて大きく、タイヤが勝負を決めるといってもいいことを深く理解していたため、タイヤメーカーに対して強いアプローチをした。
それがため、浜島さんもフェラーリのスタッフと同じく、ミヒャエルの網の中にずっぽり捕らえられる1人になった。

・フェラーリのリーダーシップ

現代のF1チームにおいて、ドライバーという職種は、エンジニアやメカニックたち総勢数百人のスタッフを束ねるリーダーではない。トップに立ってマネジメントを担当するのは、としかさの別の人間だ。
フェラーリでは、組織のリーダーはトッドで、ミヒャエルは、組織の構図上、トッド及びロスの下に位置した。その位置にあってミヒャエルは、「トッドと自分」「ロスと自分」の間に、完璧な信頼関係を作り上げることによって、「実質的な」リーダーの1人としてチームを動かした、という解釈を、自分はしている。

彼等3人の間の信頼関係の深さは、繰り返すまでもない。これは、ロスが語ったように、人間的にウマがあった(本人の言葉は「波長があっている」)と同時に、仕事の能力のレベルが揃っていたからだろう。
此方の要求に、相手が十分応える、これが一方通行しか成立しなければ、片方は不満を持つ。彼等3人は、互いに、相手が自分の要求に応えることのできるレベルであり、3人が組むことによって、より強固で効果的なリーダーシップの形成をもたらしたのではないか。

ミヒャエルは、チームの仕事のあらゆる面に興味を持った。ドライバーとしての仕事に止まらない広い知識と見識を持っていたため、ロスとトッドは、さまざまな件に関して彼から意見を聞いた。
チームスタッフの人事についてさえ。これはロスの口が滑った、に近いと思うが、このことからは、ミヒャエルがチームメート(セカンドドライバー)の人選にも、当然に意見を述べたことが推測できる。

ミヒャエル自身は、自分がチームメートの選択権を持っていたとは最後まで公式には認めなかった。決めるのはチームだ、と。しかし、トッドは彼に意見を求め、それに対して彼は意見を述べ、彼の意見に反する決定をトッドがすることはなかったのだと思う。

チーム運営上の様々な事柄について、最終的な決定をするのは、トッドなり、ロスである。だが2人は、常にミヒャエルに意見を求め、彼の意見を決定に反映させた。
これは、絶妙なバランス、といったものかもしれない。彼等3人の間にあった極めて高いレベルの信頼関係が、この協調を可能にした、と表現しようか。

・紅いベネトン

フェラーリの黄金時代の立役者は、ミヒャエルひとりではなく、マシンデザイナーのロリー・バーン、テクニカルディレクターのロス・ブラウン、そしてチームを取りまとめるボスのトッド、この4人である、という解釈は一般的だと思う。

では、彼等をフェラーリに集めたのは誰か?
トッドを任命したのはモンテゼモロ社長で、ミヒャエルを望んだのも、社長である。
ロスとロリーを望んだのは、ミヒャエルである。

公式には、2人にオファーしたのはトッドであり、2人とも、ミヒャエルから呼ばれて来たと述べたことはない。しかし、ミヒャエルは、フェラーリに来て、トッドから、「スタッフとして君がいいと思う名を教えて」と言われたから、書いて渡した、自分はベネトンしか知らないから、リストは、ベネトンのスタッフの名ばかりになった、と引き抜きを認める発言を(しゃあしゃあと)したことがある。

ロスとロリーがベネトンを離れたのは、ミヒャエルと同様に、ベネトンでの仕事に区切りをつけ、新たなチャレンジを望んだから、だろう。そして、フェラーリという場は、彼等にとっても大いに魅力があった。ベネトンは所詮、中堅チームに過ぎなかった。

選択は、一方的なものではなく、相互のものだ。しかし、トッドがロスとロリーにオファーしたのは、ミヒャエルが望んだからであり、2人はそれに応えて、フェラーリにやってきたのだった。

・勝てる環境を作るとは

私は屡、「勝てる環境を作ることもドライバーの力のうち」と書いてきた。
「偉大なドライバーは、勝つために必要なすべての要素が自分の周りに集まるのを、ただ座って待ってたりはしない」と述べたのは、パット・シモンズだ。(03年、フェルナンドに関する評価の中)
ほとんどのドライバーは、チームがいいマシンといい戦略を用意し、運が巡ってくるのを待つ。でなければ、いいマシンといい戦略を与えてくれるチームに行きたがる。
ほんの数人の偉大なドライバーだけが、「チームが与えてくれる」のを待たず、自分で作り上げることを目指して、死に物狂いで働く。
その情熱が、他人をひきつけ、「こいつを勝たせてやりたい」と思わせる。

ミヒャエルは、自分をチャンピオンにしてくれたチームから、17年間一度もタイトルを取れなかったチームへ移籍し、その後、10年間栄華の続く強いチームを作り上げた。

チームを作り上げるとは、これすなわち「人を動かす」ことである。
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