南の国の太陽、空の色の獅子

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「今まで、『当然の医療行為』とみなしていたことが、決して当然でははなかった」ことを著者に気付かせたのは、キュブラー・ロスの「死ぬ瞬間」であったが、本書は、同じ衝撃を、私に与えた。

著者の思いを綴った文章を読みながら、私は、自分が母をみとったシーンをありありと思い出した。
末期ガンで死を待っていた母の心臓がいよいよ止まったとき、病室にやってきた医師は、電気ショックをかけ、心臓マッサージをして、蘇生を試みた。
我々家族は、ただ立ち尽くし、暫くしてから、その光景を見るに絶えなくなった自分は、「もうやめて下さい」と声に出した。
けれども、これは「病院では当たり前」で、医師の行為(蘇生術)がおかしいとは思わなかったし、担当の医師は、穏やかで感じのよい人で、ずっと誠意をもって治療に当たってくれていたと思っていたので、お世話になりました、有難うございました、と頭を下げた。

そう、我々家族は、著者が描いた家族の姿そのままだった。


今、私は、はっきりと気付いた。
私は、母を見送ったとき、最初から最後まで「家族」の立場に立ち、死に行く母「本人」の立場になって「本当に」考えることはしなかった。
著者は、「死に行く人々の命を一分一秒でも先に延ばす」医療行為は、医療側の自己満足であって、患者と家族のためではない、と述べる。
そして、自分は、患者と家族の立場に立った医療行為をしたい、ゆえにホスピス医を目指す、という結論へ至る。

しかし、私は思う。「死に行く人の命を一分一秒でも先に延ばす」ことを望むのは、医療側だけではない。「家族」もそうだ。
患者本人の意思がどうであろうが、延命を望むのは、なにより、家族ではないか。
家族に支持されているという事実(お墨付き)があるゆえ、医療側は、より確信を持って延命治療を行ってきたのではないか。

家族を失いたくない、少しでも長く生きていてほしい、それは人として自然な感情だ。だが、そのとき人は、死に行く本人の本当の望みや気持に深く思いを馳せ、理解しているだろうか。
「家族を失うかわいそうな自分」に手いっぱいになっていないか?

母に生きていてほしかったという自分の未練が、「家族の自分本意の欲望」そのものであったことは、「日本人の死に時」で気づいた。(願わくは花の下にて
そして、改めて思う。

人の死は、その人ひとりのものであって、医療従事者は勿論、「家族」のものでもない。
だが、現在の日本の病院では、人の死は、医療側と家族の間だけで合意がなされ、本人が疎外されることが往々にして起こる。

人生の最後のときを、自分以外の人間(家族含む)の意思に支配され、ただ1日でも死を先に延ばすためだけの苦しみを伴う治療や、チューブに繋がれたまま長らえるだけの延命治療を受けることを避け、自分の生をできる限り自分の意思の元に置くことを望むならば、そのための準備を「自分で」しておかないといけない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本書の発行は1990年、18年前である。
この頃まで、ガンは本人に告知しないのが普通であった、と著者は記す。その後、ガンは不治の病ではなく、ガンに罹っても治る、という認識が広まっていき、今では、ガン=死と思っている人は減った。

それゆえ、病名の告知は、以前より容易になったと思われる。しかし、そのことは同時に別の問題を生んだような気がする。
ガンのうち、初期と診断されたものの多くは治癒する。しかし、進行がある限度を超えたものを治すことは、現在の医療技術ではできない。医療側は、「ここまで進行していれば、遠くない先死に至る」ことを知っている。
だが、患者側が、医療側とは異なる認識を持つケースは多い。治療すれば治るのではないかという希望を持つ。

「患者よ、がんと闘うな」の近藤氏や、「がんのウソと真実」の小野寺氏は、医療側に対する批判の言葉と同時に、患者に対しても、苦言を呈している。
多くの患者が、「私は何も判りません。先生にすべてお任せします。宜しくお願いします」と医師まかせにしてしまい、自分で知識・情報を集め、どういう治療がいいか自分で考え、自分で判断することをしない。それは自分のためにならないのに、と。

だが、人間は、「自分で考えることをしない」方が「楽」だから、それを選ぶ場合がある。選択の責任を自分が負うことを避け、医師まかせにし、欺かれていたとしても、苦しむことなく死ぬことができる人は、それでもいいのかもしれない。
残念ながら、私には、それはできそうにない。私は考える。そして選択し、その結果の責任は、自分で負う。そのように生きたいと思う。
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