南の国の太陽、空の色の獅子

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栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術」から。
TdFの実況には視聴者からのツッコミが多い、と言う話の中に、こういう一文がある。

もうひとつ興味深いのは、選手のファンによってカラーが若干違うことです。
たとえば、アンディに対して多少厳しめのコメントをしても、さほどツッコミは入りません。でも、コンタドールやニバリをいじると「いやいや栗村さん、それはちょっと」みたいなコメントが来たりします。
これは推測ですが、ファンの方々は自分に似た選手を好きになる傾向があると思うんですね。アンディは割りとマイペースですが、コンタドールやニバリはマジメですから、ファンもマジメ。
(p117)


思わずにやり。
確かに、ファンは、自分に似た選手を応援する傾向がある。アンディファンは、本人同様、基本的に「のほほん」で、カリカリしない。
悪口言われても、右の耳から左の耳。楽観主義で、物事をあれやこれや考えて悩むことはしない。他者に対して侮蔑等の悪意を向けることも少ない。

その範疇から外れるタイプの私ですら、「栗村氏、TdFの実況中にアンディに厳しいコメントしたことあったっけ?」という調子。
先日、「去就報道のミスリード」を指摘したが、これは珍しいケースだ。
普段は、「Jスポ実況解説はスルー。ヘンなこと言ってようが無視」で、ほっている。
ネット上と同じで、「気に入らないものに出会ったときの対応は、スルーが正解。どうでもいいことに、いちいちケチつけるのは、未成熟の人間のやること」が基本のスタンスであるため。

そういう自分であるが、本書の記述に対するツッコミを記したい、と思う。
瞬間で消えるTV実況の音声と違い、書籍は文字として残る。文字には文字で。

フランクの2012年TdFドーピング事件に関する記述。

12年のツールでのフランクは、全然やる気がなかった選手です。総合優勝を狙う選手ではありませんでしたし、仲のいい弟アンディも出場していません。ブリュイネル監督との確執もあり、実際、フランクの走りは精彩を欠くものでした。
しかし、そのやる気のないフランクからも出てしまった。オペラシオン・プエルトで一度疑惑がかけられたにも関わらずですよ。
本人は否定していますが、もしフランクまでもがやっていたとすると、僕たちが想像する以上に、今もプロにとってはドーピングが「常識」だということです。勝つ気はゼロ、やる気なしの選手でも、とりあえずドーピングはしておく。
この後触れるランスのアームストロングの言葉じゃないですが、自転車を整備するように、ごくごく当然の準備として能力向上薬物を体に入れたということです。
(p188)


最初に断ると、フランクが故意だったか否か、私の意見を求められたら、「今この瞬間での回答」は、80~90%で故意。
この数値は、50まで下がるときもある。50というのは、「どっちなのか判りません」という意味だ。
日々、新たな情報を入手するにつれて、上がったり下がったりして、結論として確定していない。

事件後まだ1年だから、それで当然。
コンタドール事件は、3年経つが、これもまだ未決。この事件は、フランクと同様「原因を特定できないが、おそらく汚染事故」が「公式に出された結論」であり、こちらの判定はフランクの件の判定に強い関連性を持つ。
具体的にいえば、コンタドールが無実という確証を得られたなら、フランクも無実の可能性が増加する。逆も然りで、相関する。

自分がランスの結論を出すまでには5年以上かかったのだから、そんなもの。

ヴォーターズが、今年のフルームを巡る疑惑騒動について、(真実は)10年経てば判るさ、誰も10年待ちたくはないけどね、という台詞を吐いた。
この発言の本意は別のところにあるかもしれぬが、私は、「考え方の一つとして」、これはありだ、とはっとなった。

「結論に達するまでには時間がかかる」と腹を括る。
それまでの「揺らぎ」は、必然のものとして受容する。

そういうわけで、フランクのクロシロ判定については栗村氏と争わないが、結論は同じでも、それに至る事実認識に、違いがある。

私の主張の要旨を先に書くと、
「栗村氏は、2012年度のシュレク兄弟に関する情報を持たなさすぎです」。

栗村氏は、12年TdFでフランクは「やる気がなかった」という台詞を連呼している。
私は、これに異を唱える。
「やる気がなかった」という見方は、妥当でない。

私の解釈は、当時ネットで収集可能だった各国メディアの記事から得た情報を根拠にしている。
メインは、フランクの母国ルクセンブルクのサイト。
名称とURLはリンク集に載せてある。
彼等は、TdFに記者を送り、連日、フランクに張り付いている。

Luxemburger Wort(ドイツ語版)は、TdFが始まると、毎日、フランクのインタビューを載せた。
Le Quotidienのインタビュー掲載は数日おきだが、記者の質問を含めた長めの記事を作るので、Wortと補完し合い、発言の趣旨の理解を助ける。

母国以外の他国紙が記事を載せる頻度は低いが、時々出現するので、英語4紙、デンマーク、フランス、ドイツ、ベルギー各紙もヘッドラインをチェックしていた。
詳細は、2012年6月7月の記述を参照頂きたい。

フランクの心情に関する私の解釈は、
「彼は、TdFで結果を出すことを欲していた。
ブリュイネールの指示と要求のために、TdFに合わせたコンディション調整をすることができず、自信がなかったが、スタート時には、チームのリーダーの責任を負う覚悟があった。
1週目は順調に進んでいった。
しかし、山岳ステージ前日の第6ステージで、落車に巻き込まれた彼を、ブリュイネールから任されて現場の指揮を執るA.ギャロパンは見捨てた。
ギャロパンの仕打ちにフランクは深く傷ついたが、彼を案じて毎日励まし続けるアンディとアンデルセンに支えられて、2週目を乗り切り、3週目の山岳ステージに意欲を持っていた」

「精彩を欠く」走り、といわれるのは理解できる。しかし、「全然やる気がなかった選手」という評価は、適切ではない、と思う。
そんな「安易」な言葉ですますには、このTdFでのフランクは、様々な事情を背負いすぎていた。

栗村氏の「やる気がない」発言の元になった情報は、おそらく、TdSでのフランクの「TdFのリーダーをやりたくない」発言だろう、と思う。
これは、各国語で広く流布した。

TdF直前にフランクはこの発言を翻すが、そのことは、私のようにルクスメディアをしっかりフォローしていないとキャッチできなかった可能性がある。

私は記者会見を報じた記事を列挙したが、順番がルクス紙4本、ドイツ紙、アメリカ紙各1本。

ルクスメディアたちの調子は一様。フランクがリーダーの役割を引き受けた、と報じている。
自明であったとはいえ、本人の口からちゃんと聞きたい、と確認。

「僕は、TdFのリーダーになりたくないと言ったことはないと言いたい。僕が言いたかったのは、責任を取れるだけの理想的な準備をしていなかった、という意味だよ」
「僕らは、TdFで勝利を目指すためにここにいるし、最善を尽くす。僕ひとりが責任を負う選手じゃない。ファビアン、アンドレアス、クリスもいる」


チームが、「フランクとクーレデンをリーダーに指名したこと」は、記者会見前に、ギャロパンがLe Quotidieのインタビューで明言しており、チーム公式サイトが「2人を並べた図」を掲載した事実でも、確認できていた。

以上「複数の明確な事実」があるにも関わらず、栗村氏は、チームプレゼンテーションの中継で、RSNTのリーダーはホーナー、という「まったくのデタラメ」を断言した。

栗村氏が、ホーナーがエース、と「デタラメ」をJスポ実況でも喋っていて、どこで読んだのやらと思うが、見当たるのはcyclingtimeの記事くらい。(2012/07/01)


「日本語」以外の他国語では発見できなかったので、どうやら「2人の日本人が、日本語で、日本国内に、デタラメを流した」らしい。

このように、栗村氏は「TdF開始前」から「事実誤認」をしていて、その後、修正することができなかった、と言えそうである。
こうして振り返ると、今年の去就報道のミスリードと同じであったことに気づく。

2回のケース共、ミスリードの根本的な原因は、「情報収集の不足」にある。
このことそのものは、やむをえない。ルクセンブルグ4紙チェックは、ファンだからできることで、お前もやれと要求するのは無体だ。

問題があるとすれば、「自分が情報不足である」ことの自覚に欠け、自分の勝手な想像を「こうです」と断定して、電波に乗せること、だろう。
「裏付けのない」ことを、「幅」を持たせることなく、ひとつに決めつけて、言い切ってしまう。

「決めつけ」を避ける伝え方を心がけたら如何ですかね、といったところか。


私かて、上記のフランクの心情の解釈を自信を持って言い切らない。
「そうだったんじゃないか、と私は思う」というだけだ。

彼は生真面目な性格で、神経質だ。物事をぐちぐちうだうだ気にする。正反対の「のほほん」性格のアンディが「大丈夫だって」と兄を励ます。そういう話を読んだ。

当時、フランクは、GMブリュイネールと衝突し、同時に、オーナー・ベッカとも衝突していた。
数ヶ月前から出ていたこの噂は、TdF中に、確認がとれた。
wortがはっきり記載し、シュレク兄弟がチーム離脱を望んで活動していることが、明白になった。

移籍活動が、どこかと具体的に進んでいたのか、それとも現契約が強固すぎて解除ができないと諦めたのか(同じく離脱を画策していたファビアンが、この理由で離脱を諦めたことが伝わっている)、フランクの陽性で計画が途中で潰れたのか、事実は定かでない。

しかし、離脱願望が事実であったことは、移籍の条件を上げる(自分の市場価値を上げる)ため、フランクがTdFで結果を欲していた、という解釈の後押しにならないか?

チームのオーナー(及びGM)と衝突し、本気で離脱を望んでいたのは、チームの中の一部の人間だけだった、と推測される。
その年の春、「給料未払い」の仕打ちを受けて、UCIに訴え出たシュレク兄弟とファビアンの3人、加えてフグルサング。
「超高額ギャラ」で契約したのに、それに見合った戦績(ビッグレースでの勝利)を挙げて来ない、とベッカが不満を抱いたエースたち、である。

給料の支払いを受け、ベッカから文句を言われず、ブリュイネールともうまくやっていかれる、中堅・若手の選手たちは、エースたちの抱えた問題には無縁で、無関係だった。

このことは、TdFを走るフランクを孤立した境遇に追い込んだ、と思う。
前の年まで、チームメンバーはみな気心が知れ、信頼できる仲間たちだったのに、今、心が通じるのはほんの数人しかいない。

そして、第6ステージで、A.ギャロパンが、落車に巻き込まれて後方集団に残されたフランクを、チームの誰一人も迎えにいかせず、見捨てたこと、そしてステージ後に記者に囲まれたギャロパンの、自分の決定の説明の中の台詞「フランクは、昨年、落車しなかったけれど、優勝できなかった」、この2つが、フランクの心に、深い傷を負わせた。

「昨年、落車しなかったけれど、優勝できなかった」
落車しなくても勝てなかった選手なんだから、落車したら、当然勝てないに決まっている。だから助けず、置いていった。理にかなってるだろ。そういうことか。
自分に対して、チームリーダーとしての信頼は、なかったのか。
明日から山岳ステージだ。山は、自分が、チームの誰より登れる。そのことをチームは判っているはずだ。それなのに、山岳が始まる前日に、落車の巻き込まれで遅れた自分を見限ったとは。

選手やスタッフの一部は、フランクに同情した、と思う。
フランクの怒りと恨みの矛先は、A.ギャロパンだ。フランクを見捨てることを決め、指示したのは彼だ。

*フランクとアンディは、今も、ギャロパンを、心の中で恨んでいる、と思う。
今のチームに在籍する間は口から出さないけれど。
彼等は、08年TdFでのサストレに対する深い恨みを、リースのチームにいる間は黙っていた。後に、ぐちぐち繰り返すことになる。

第6ステージ後、私は、神経の細いフランクの心が折れたのではないか、という危惧を抱いた。
「このチームにいるのはもう御免」と、巨大なストレスに押し潰され、壊れる寸前ではないか、と。

「フランクにかかっているストレスがすさまじくて、胃に穴が開いても不思議ないくらい」
この文章を書いたのは、彼が陽性を出したことを伝える報道が出た7/18の前日、7/17だった。

7/18に第一報を読んだとき、私の頭に浮かんだ台詞は、「ああ、やっちまった」。
彼が心理的に追い込まれて、不安定になり、正常な判断能力を失う状態になるかもしれない、という認識があったゆえに、「ふらふらと手を出してしまった」、あるいは「稚拙なやり方をして隠すのをしくじった」。
彼は、自分に力があることを示して、自分を侮辱したA.ギャロパンを見返してやりたかったのだろう、と。



以上は、今まで書かずにいた、1年前の私の心情である。
いつか書こうと思っていて、栗村氏の記述に触発された。
(だから実は、栗村氏への批判は枝葉で、本旨はこっち)



読書中
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