南の国の太陽、空の色の獅子

Category :  展覧会
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東京都庭園美術館

行こうと思いながら長いこと先送りにしていた庭園美術館に、ようやく出掛けてきた。
この美術館の存在を知ったのは随分昔だ。オフコースのプロモビデオのロケで、ここのエントランスを使用した。どこの洋館かと気になった。

東京に越してきてからも先送りになっていたのは、どうせ行くなら興味のある展覧会のときに、と思っていたら、なかなか当たらなかったため。
今回展示されていた、過去開催された展覧会のポスターを一瞥したところ、確かに自分がすっとんでくるジャンルはなかった。

重い腰をあげたのは、10月初旬(10/1~13)開催される「アール・デコの館ー庭園美術館建物公開」が、建物そのものがメインで、新たに公開する部屋もあり、通常は禁止の館内の写真撮影がOK、とあったため。
自分の興味の対象は建物なので、これがよい、と待っていた。

結果、3時間滞在し、はしごを予定していた隣接する国立自然教育園の訪問は、次の機会に繰越となった。

アール・デコという様式そのものは、自分の趣味とはいえない。ラリックの作品単体の展覧会があっても足を運ぶ意欲はない。
この建物に興味を持ったのは、1930年代に、ひとつの様式を追及し、細部まで統一して装飾を施し、金を惜しまず作りこんだ館、という事前の知識による。

別の見方をすると、注文主の朝香宮は、フランスで見てきた最新流行のスタイルの家が欲しい、と言いだした「フランスかぶれ」の上に、細々と注文の多い、えらい我儘で、金のかかる宮様だったことになる。しかし、芸術というのは、ルネサンス期から、権力者・支配階級の道楽だった。
日本でも、権力を持つ者が金と手間を惜しまず、当代の技術の粋を尽くして作ったものが、優れた文化財として現在まで伝わる。日本は、火災・地震等でモノが焼失しやすい風土で、運に恵まれないと長い歳月残らず、明治~昭和の建物も、空襲で失われたものは多い。

ここは空襲で焼けずにすみ、美術館側は、米軍が空襲を避けた、と説明している。
但し、この種の話はときどき眉唾だ。というのは、先日、永青文庫の館内に置いてあった出版物を読んでいたら、近くにカトリックの総本山があったため空襲を免れた、という記述があった。東京カテドラル聖マリア大聖堂のことか、と納得したら、後日、大聖堂の説明として、空襲で焼けたため建て直したとあり、「あれれ?」となった。

朝香宮の経歴や、旧皇族の土地・邸宅が西武の所有になっていく過程の話は、本で読んでいた。
「戦前の皇族」がどういうものであったか、という知識は、自分の世代では完全に抜け落ちていて、「語られなかった皇族たちの真実」(竹田恒泰)を読んだとき、初めて知る事柄の数々を非常に面白く感じた。
続けて、参考文献に挙げられていた「ミカドの肖像」(猪瀬直樹)を読んだ。この本は、母が買って自宅の棚にあったが、読むのが今頃になってしまった。
この2冊の知識があると、旧朝香宮邸(庭園美術館)は楽しめる。

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建物の外観には、特筆することはない。時間の経過に耐える材質ではないので、現時点で貧相にみえる。
売りものはなんといっても内部の装飾で、アール・デコの知識・趣味がなくても、見応えがある。
1階がフランス人アンリ・ラパンとルネ・ラリックの手により、2階は宮内省内匠寮の日本人技術者が手掛けた。
2階には一家の私室が並び、照明器具と通風口、ラジエーターカバーのデザインが、各部屋すべて違うという凝り方で、それぞれを見るだけでも楽しい。
壁紙は当時のものではないが、掲示してある壁紙の現物の一部と、当時の部屋を撮影したモノクロ写真とで想像力を働かせると、使用されていた当時の情景を思い描くことができる。

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社会的視点に戻り、改めて施工の年代を確認すると、建築計画の始まりが昭和4年、竣工が昭和8年とある。
満州事変が昭和6年だから、日本が泥沼の戦争の時代に突入していくただ中に、「道楽も道楽」であったな、と思う。

美術館の名称に使っている庭園は、特段のものではないと思う。ただ、建物の南面に広がる芝生に、椅子をいくつか設置してあり、寛げるようになっている。非日常の、いい気分に浸れる。

下の写真の建物正面の2階の内部が、上の写真。
椅子に腰かけると、庭が見下ろせ、目を上げると正面は深い樹木で、ビル群や高架の高速道路は視界から隠され、なかなか見事な景観。

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