南の国の太陽、空の色の獅子

Category :  フィギュアスケート
tag : 
棚の中のファイルの整理中、母が送ってきたFAXの1枚が紛れ込んでいたのをみつけた。
読んでみると、後半に、こう書かれていた。

「昨夜の話の中のフィギュア。今朝の朝日に「16才プルシェンコに期待」という見出しで、写真ものっていました。
”ロシアの新星”とありましたので、この子のことでしょう!
まだ子供って感じ。思わず笑い出しました。」
日付は、1998年11月25日。

母が存命であれば、「29才になったのに、まだ現役やって、9回目の国内チャンピオンになった」と伝えたら、「貴女の好みの相手は、みな長いわね」という返答が戻ってきたのではないだろうか。

14才で世界ジュニアに優勝した姿を見た日、「この子が次のトップになる子ね」と思った。
翌年、シニア世界選の彼を見て、「とんでもない選手」だと思った。あの日以降、自分にとって「別格」になった。だが14年後にこういう選手になることは想定しなかった。

いや。
「この子はこの先一体どうなるのだろう?」と途方に暮れ、想像が、「まったく、できなかった」。

・・・・・・・・・

バンクーバー五輪終了後に、自分はこのブログに色々書いた。当時、自分は、今後4回転ジャンプが消え去ることを想定していた。
翌シーズン、そのよみが間違っていたことを、知った。

私はなぜ読み違いをしたのか。
ひとつは、男子選手たちの「アスリートとしての魂」を、見落としていたのではないだろうか。
彼等にとっては、「審判から高い点数を貰うことがすべて」ではなかった。採点法がどうなろうと、男は4回転ジャンプを目指すものという価値観が、多くの選手の間で失われることはなかったのだ。

しかし、バンクーバー五輪前夜、4回転が死滅の淵にあったことは確かだった。
新採点法は「クリーンで、質の高いもの」をよしとし、4回転ジャンプそのものに高い価値を認めなかった。4回転は、失敗したときの減点が大きく、「ハイリスク・ローリターン」の技に貶められた。

このシーズンに競技会に復帰して、以前と同様4回転を連発し、「フィギュアスケートに4回転は必要。スポーツに技術の後退はありえない」、「4回転をもっと高く評価して欲しい」と採点法の変更を求めたジェーニャに、五輪で審判たちが金メダルを与えることはなかった。
けれども、その後ISUは、4回転ジャンプに挑戦するリスクを軽減する採点方法の改定を行った。

フィギュアスケートの将来の姿は、採点法が決める。素晴らしい選手が1人2人いたところで、採点法が作る流れを変えることはできない。

時代の大きな流れを個人が止めることはできない。押し流される。どこの世界でもそうだ。

http://leonazul.blog87.fc2.com/blog-entry-492.html

この見方を、私は改めなければならない。
採点法の変更の実現が、ジェーニャ1人の力によるものとは主張しない。しかし、トリノ五輪後に一方向に進んでいた採点法の流れに、公然と異議を唱え、大きな論争を巻き起こしたのは、紛うこと無く彼である。
世間の意見は二分されていたと記憶している。五輪の結果に不服を唱えた彼に対して、批判の声も多くあった。

最も肝心なことは、4回転を鮮やかに決め、氷上で圧倒的な存在感を示すジェーニャを目の当たりにした男子選手たちが、「自分もこうでありたい」「自分も4回転を跳べるようになりたい」と触発されたことではなかっただろうか。
「4回転がなくても質の高い演技」は、「高みを目指す若者たちの目標」になりえるものではなかった。バンクーバーまでの採点法を決めた年嵩の人間たちの意向に反して。

「時代の大きな流れ」に見えていたものに抗い、進む方向を変えさせる。そういうことをした選手を、私は、初めて見た。
F1では、見たことがない。人間離れした稀代の天才であろうとも、時代の流れに押し流される。そういうもの、と解釈してきた。

・・・・・・・・・

バンクーバー五輪後の2010年世界選の表彰式後の記者会見場で、4回転に拘る、2人の旧採点法世代のメダリスト(高橋君とジュベール)の隣に座ったパトリック・チャンが、自分も来季は4回転を目指す、と発言したという記事を読んだとき、私は本気にしなかった。
彼は、4回転が必要という価値観を持っていなかったようだったし、4回転がなくても近々トップになることが約束された選手だった。新採点法の申し子で、ジャンプ以外の要素で高い評価を得る彼は、リスクを負って4回転を跳ぶことにメリットがない。

翌シーズン、言葉通り4回転を入れてきたのには、吃驚した。シーズン緒戦や国内選ではやっても、世界選では安全策をとって回避するのでは、と思ったら、あにはからんや、挑戦して、見事成功させた。
このことは、最大の安堵だった。彼が4回転を目指すか否かが、4回転の将来を左右すると思っていた。

次代の主のパトリックが4回転を選択したことで、みたび4回転論争が復活することはなくなった。
いま男子Sの世界は、ジェーニャが指し示した方向へと進んでいく。

・・・・・・・・・

自分は、これから暫くの間、のんびりと観戦する。そうせざるをえない。なにしろフィギュアスケート人気が出過ぎて、現地観戦したくてもチケットを正規ルートで購入できないという、過去最悪の観戦環境だ。
数年前から、演技中に喋り続ける客が来るようになった等文句を言っていたが、観戦できるだけましだった。今年の東京世界選は、ついにチケット入手不可能になってしまい、「ことここに極まれり」である。

といっても日本人はいずれ必ず冷めるので、待つことにする。見守っていきたいなと思う相手をみつけたので、少々残念ではあるのだが・・フィギュアスケート観戦の最大の醍醐味は、「子供の頃から見守ること」にあるのである。
スポンサーサイト

コメント


この記事に対するコメントの投稿
















この記事に対するトラックバック

トラックバックURL
http://leonazul.blog87.fc2.com/tb.php/1134-1f8d1501
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)